会社で生きることを決めた君へ

仕事にムダが多い.ではムダが多いぶんをどうやってカバーするかというと,量でこなすしかありません.そうやって経験を積みながら,少しずつ仕事のコツを覚えていく.計画的・効率的な仕事を進め方を習得していく.それが20代から30代前半までの時期だと思います.
この時期には少々無理をしても,それを十分に補える体力があります.しかし40代になってからも,同じような働き方をしていたら,あるいは同じ働き方をすることによってしか成果をあげられないとしたら,あなたの能力が疑われることになります.

管理職がプレーヤーまでやってしまうと,部下を育てるという管理職としての重要な責任を放棄してしまうことにもなるのです.ですから,プレーイング・マネージャーにはなってはいけないのです.マネジメントに徹することが大切です.チームとしての方針を示し,チームやメンバーの状況を把握しながら,適切な部下指導をおこなうことで,チーム力を高めていく.そうした仕事に全力を尽くすべきなのです.
そのためには,部下の前ではなるべく暇そうな素振りをしていることも大事です.もし上司が時間に追いかけられ忙しそうに働いていたら,部下は相談したいことがあっても声を掛けにくくなります.
重要度の高い仕事と低い仕事を見極め,またプレーイング・マネージャーをやめることによって時間に余裕ができたら,その時間を「人間として幅を広げること」に使ってください.

30代までは,どれだけがむしゃらに働くかが,その人の成長角度を決めます.
しかし40代以降は,しなやかに生きることが,その後の人生を実り豊かなものにできるかどうかを決定づけることになります.

自分が幸せになることと,他社を幸せにすることは対立する概念ではありません.
仕事で成果をあげたければ,自分のことよりも,同僚や部下のこと,お客様のこと,社会のことを優先して働ける人間であることが大事.すると仕事の成果をあげることができます.
世のため人のために生きることが,いずれ自分に跳ね返ってくるのです.

上司が自分のことを嫌っているのなら,自分のことを好きにさせてしまえばいいのです.具体的には,自分に対する上司の注文を徹底的に聞くということです.
上司はあなたに対して,「本当はこうあってほしい」という期待を持っているのに,その期待にあなたが応えていないから不満を抱くのです.
そこで大切になるのは,上司があなたに対して何を期待しているかを正しく知ることです.もしわからなければ「私の仕事のやり方のどこに不満を感じていますか」とはっきり質問してもいいでしょう.

マネージャーに求められるのは,組織が決めたことを着実に遂行することです.つまりToDoが求められます.
一方リーダーに求められているのは,正しくあることです.「自分自身はどう正しくあるか」「会社はどう正しくあるか」を考え,その考えを自分の中に確率していることがリーダーには求められます.これが新渡戸の言うところのToBeです.

一部の優秀な部下の能力を2割アップさせるよりも,すべての部下の能力を1割アップさせる方が,より強いチームが出来上がるのです.また全体の底上げをしておけば,仮に異動によって優秀な部下を失った場合でも,その穴埋めをチーム全体でおこなうことが可能になります.
リーダーの仕事は,その組織を構成するメンバーのパフォーマンスの和を最大限に持って行くことです.メンバーの強みの部分だけを集めて,弱みについてはほかのメンバーにフォローさせることによって隠していく.これができるリーダーは,部下を育てながら,常に結果を残し続けることができます.

組織の中に異端児などおらず,トップが号令をかけたらメンバーが一斉に同じ方向に向けて走り出すチームは,スピード感があります.しかし,そうした集団は同質性が高いために,間違えるときは全員が一斉に間違えてしまうものです.またものごとが行き詰ったときに,斬新な発想でブレイクスルーを起こすのも苦手です.ここで異端児の存在が重要になるのです.
異端児を活用してチームの中にコンフリクトを起こすと,その間は仕事のスピードは遅くなります.ただし,結果的にはより強い組織ができあがるのです.
リーダーが「ちょっと変わっている彼ら」を認めてあげ,ほかのメンバーにも認めさせれば,彼らのモチベーションは大きく上がります.枠にとらわれない自由な発想や行動で,同質性の高い組織に風穴をあける存在になってくれるはずです.
リーダーは「彼はチームの中では異端児なのだから,その良さを活かすためにマイナス面には目をつぶろう」と考えるべきかというと,そんなことはありません.メンバーが協力しあいながら,気持ちよく仕事をしていくための最低限のルールについては,異端児であろうとなかろうと守らせる必要があります.
多様な視点や発想を持っている人がその能力を存分に発揮できるように「自由」を与えながら,一方で組織を成り立たせるための「規律」も必要です.自由と規律の両立という難しいバランスの中で,異端児を活かす組織づくりがリーダーには求められます.

なぜ人は働かなくてはいけないのでしょうか.「人は自分の成長のためと,何かに貢献するために働いている」.
仕事と趣味が違うのは,自分が成長を遂げることが,社会に貢献することにもつながることです.
自己を成長させたいという欲求と,社会に貢献したいという欲求の両者を満たせるのが仕事です.私たちが働く意味はそこにあります.

「何か勉強しなければいけない」と思ってやるような,いわゆる「勉強」は,時間のムダです.本当に必要な勉強は,「仕事で成果を挙げるためには,これをやらざるをえない」という必然性の中から浮かび上がってくるものです.やるべき勉強のテーマがまだ見つかっていないなら,まずは自分の仕事に打ち込むことに集中してください.

「普通の人間は,自分の能力に関しては40%のインフレで考え,他人の能力に関しては40%のデフレで考える」.これは元最高検察庁検事で,現在は弁護士を務めている堀田力さんの言葉です.人は自分のことは過大評価し,他人のことは過小評価するという意味です.

本物を見るという体験は,とても大切です.本物を見るたびに,感動するとともに,自分の小ささを認識し,謙虚になれるからです.
本物を見てきた人は,自分を超えた存在があることを感じながら,謙虚さを持ちつつ自己を高め続けることができるようになります.

なぜ人は働かなくてはいけないのでしょうか.「人は自分の成長のためと,何かに貢献するために働いている」... 
なんだろう,この違和感は.
貢献する何かは,社内じゃないんだと思うんですよね.
絶対に社会(社外)!


近況連絡いただいたN島さんに感謝です.