結果を出すリーダーの条件

結果を出すリーダーの条件 (PHPビジネス新書)

結果を出すリーダーの条件 (PHPビジネス新書)

私はデッドラインで,残業ゼロを達成した.
何があっても絶対に守る期限としてデッドラインを浸透させると,部下は悲鳴を上げることになるかもしれないが,きちんと結果を出す組織ができてくる.
デッドラインを徹底させると何がいいかといえば,それは悪者が,仕事にスピードを要求するリーダーではなく,デッドラインになることだ.

部下に対してあまり厳しすぎると,精神的にまいってしまうのではないか,こんな心配をしている人は,それだけでリーダー失格だ.それぞれのメンバーがこれでもかというくらい能力を出し切って仕事をしなければ,厳しい競争には勝ち抜いていけないのである.
全力で取り組んで目に見える結果を出し,それを周囲からも認められて心を病むことなどあるだろうか.
そのためには意図的に社内を明るくしていかないといけない.リーダーの条件の一つとしてよく挙げられるユーモアのセンスもそうであろうし,社内の情報の共有化・透明化も役立つはずだ.
私からのアドバイスはただひとつ.よく寝ること.八時間寝ればたいていのストレスは吹き飛んでしまう.十分な睡眠時間を確保してもらうというのも,私がトリンプで残業ゼロを徹底した理由の一つだ.

何のために会社は存在するのかといったら,やはりそれは利益を上げるためであることは間違いない.そして,利益を最大化するのが企業トップや各部門のリーダーに課せられた使命,そのリーダーのトップダウンの指示に,ボトムアップで応えるのが社員である.

会社や社員の進むべき適切な方向を指し示すわが信条があって,
第一は,顧客に対する責任.第二は,全社員に対する責任.第三は,地域社会および全世界に対する責任.第四は,会社の株主に対する責任.

武士道の境地を意識して事にあたるというのは,リーダーには必要なことである.簡単にいえば,自分の都合や利益よりも,自分がリーダーを任されている組織,あるいは社会・国家にとって最善のことは何かを常に考えるのだ.その姿勢さえぶれなければ,リーダーとして大きな失敗をすることはない.

会社では,会社の利益を上げることが最優先という意識が社員の間に徹底されていて,なおかつすべての情報がオープンであることが理想的だ.そうすれば,リーダーの指示と部下の思いが相反することなく,自然と全員が一丸となって同じ方向に進む.だから,リーダーは情報を独占するのではなく,積極的に部下に開示すべきなのだ.

「社長命令だから」「会社の決まりだから」と但し書きをつけて伝えたら,これは自分の責任ではないといっているのと同じである.要するに,リーダーがその課題解決に命を懸けていないということだから,これでは部下が必死になるはずがない.当事者意識のない命令では,人は動かないのである.
それがどうしても納得できない場合,私は自分の部下に対し,オーナーの意向だけでなく,私は効果に疑問をもっているという自分の考えも併せて伝えるようにした.リーダーである自分も同じように理不尽さを感じているとあえてわからせることで,部下と一体感が生まれる.

部下には積極的にチャンスを与えるべきであろう.成長したい人間は,自分で学ぶしかないのである.そして,部下にその学習の機会を用意するのが上司の役目なのだ.
また,仕事を与える際には,一部分だけ切り分けてこれだけやってくれというようなやり方ではなく,ひとつの分野やプロジェクトを丸ごと任せること,それで,着地点と進め方を双方で確認したら,あとは結果報告を受けるデッドラインの日を待つ.どうやってやるかに関しては,部下の判断を信じればいいのである.

和やチームワークを優先すると,どうしても組織に甘さが残ってしまう.イチローが監督になったら,自分のような選手が九人いるようなチームを作ろうとするだろう.それぞれが厳しく自分を追い込み,ギリギリまでパフォーマンスを高め,しのぎを削る.その総和がチーム力になるという考え方だ.本当に強いチームをつくるには,絶対にこちらのほうである.ただし,チームをまとめるのが難しい.

理想のリーダーとなるためには,うまくいかなくても強い意志をもって,何度も何度も挑戦するのである.試行錯誤を繰り返さないで成長することはできないのだ.
その過程で,私利私欲を捨てることや,高い倫理観をもつこと,部分最適ではなく全体最適を当たり前として考えられるようになることなども,併せて自分に厳しく課していく.
部下から信頼されないとか,部下がついてこないとかいってる暇があったら,ひたすら自分を磨くのだ.
やがて自分がリーダーとして成長すれば,必ず部下もついてきてくれるものだし,信頼も勝ち取ることができる.そうならないうちは,まだまだ自分の努力と試行錯誤が十分でないと思わなければならない.
そして,自分に対するのと同様に部下にも厳しく接すること.そうしないと部下が育たない.自分が成長するだけでなく,部下を成長させることも忘れてはならない.だから任せるところは任せる,を肝に銘じたい.
少なくとも,部下には最低,自分のレベルにまでは成長してもらわないといけない.ただし,いつまでも部下に対してホウレンソウをやっていると,せいぜい自分のレベルで成長が止まる.でも任せると,それ以上に成長してくれる可能性があることを覚えておかないといけない.
それから辛抱と忍耐.これもリーダーにとっては不可欠な要素だ.
部下は競争と通じてこそ力をつけ生存能力を高めていく.
しかし,強いものだけが残ればいいというのでは組織は成り立たない.それぞれの能力や適材適所を見極め,どこをどのように伸ばせば組織として最大の力が出せるようになるかを,リーダーはよく考えなければならない.
そして最後に,なんといっても根気が必要だ.こうやると決めたら腹を据え,結果が出るまで我慢してそれを続ける.
「成功するまでやれば,必ず成功する」

武士道を持つ武士より,お金大好き盗賊の多いことよ!