「いい人」をやめる男の成功哲学

島耕作に知る 「いい人」をやめる男の成功哲学 (講談社+α文庫)

島耕作に知る 「いい人」をやめる男の成功哲学 (講談社+α文庫)

ほんとうの自分とか自分探しの対象となる自分は,何かに夢中になっている自分だ.夢中になれることが幸せなのだ.
夢中になれる自分とは,個性をうまく表せる自分だ.「いい人」にはそれがない.

人生の目的は楽しくすごすことだ.気持ちよく生きることだ.金持ちでも楽しくなければ目的を見誤っている.貧しくても楽しければその道は間違いではない.
どんなにいまの境涯が最初の目標から離れていても,死ぬとき,「まぁ自分の一生は面白かった」と思えればそれでいい.
幸福とは何だろうかと考えてみる.楽しかったと思える人生は幸福だろう.

どこにいても何をやってもオレはオレだと居直る.それがいさぎよさだ.
こんなはずじゃなかった,元に戻りたいと言い出したらいつまでも出発できない.人生というのは自分で歩いていくことだ.自分で自分を育てるということだ.
護送船団方式がなくなろうが,終身雇用が崩れようが,リストラされようが,失職しようが,忘れてはならないのは,「いま」いる場所でさわやかに居直れることだ.

不良社員についてはこう考えている.
ひとつはまず,文字通り「不良」であること.上司には逆らう.規則は破る.慣習は無視する.したがって目立つ.
しかし欠陥社員や悪徳社員ではない.自分の仕事を放り投げたり,伝票をごまかしたりはしない.万事に無防備だが,ミスや間違いを指摘されれば悪びれずに謝る.
元気がいい.陰でコソコソ動き回らず,自分の態度をつねにはっきりさせる.だから顰蹙もしばしば買うが,誰の目にもつねに気がかりな存在となる.
ぼくが言いたいのは,そういう不良社員はなぜか人望があるということだ.

不良社員はときおり,周囲がドキンとするような言葉を吐く.それも無造作に言ってのける.
なぜドキンとするか.図星だからだ.誰もが胸の奥で呑み込んでいる言葉をサラリと吐く.
不良社員はこういう馴れ合いをぶちこわす.「アンタが悪い」と結論を出してしまう.
もともと無頓着な人間だから,その場の雰囲気なんか気にしないのだ.「いい人」の集団は沈黙せざるを得ない.

不良社員が元気なのは,いつも新鮮な空気を吸っているからだ.「いやなものはいや」と切り捨てて,好きな世界に気の向くままに飛び込んでいるからだ.

「いやなものはいや」という切り捨て方は,あと腐れがないはずだ.自分がいやで切り捨てたものを後で欲しがってもしようがない.好きなように行動するのだから,他人の目や反感なんて気にしてられない.
不良社員の行動には,そういう意味での潔さが確かにある.他人の評価とは無縁に動いているのだから,言い訳や弁解も無用なのだ.
では自分を律するものがないかと言えば,そうではない.最低の責任さえ果たさなくなったり,不正に手を染めることまでやってしまえばすぐにクビを切られる.
好き勝手に動いている不良社員が,それでも社内で一目置かれているのはやるべきことをやっているからだ.誰もが守らなければいけない規則はきちんと守っているからだ.
上司に逆らうことはあっても,仕事上の約束事は守る.いつでもさっさと席を立つ不良社員だが,溜まった仕事を片付けるときは独りで遅くまで残業している.
でもよく考えれば,不良社員のこういう特徴はごく自然のことではないか.
なぜなら自分に後ろめたさややましさがあったら好き勝手に振舞えない.突っつかれてホコリの出る身体なら,目立つわけにはいかない.
不良社員が不良であり続けるためには,自分を強く律さなければいけない.基本的な部分に何の後ろめたさも持たないことが前提になってくる.

不良社員の人望力に気付くのは,意外な人間が意外な評価をしているからだ.
たとえば出入りの業者に評判がいい.清掃会社から派遣されているおばさんに人気があったり,出前のラーメンを持ってくるお兄さんに慕われていたりする.
不良社員には裏表がないし,元気がいい.言いたいことは上司が相手でもズケズケ言うけど,そこに悪意や陰湿さがない.
実は不良社員というのは,他人に対して謙虚さを持っている.「いい人」を少しもバカにしていない.自分には興味がないから近寄らないだけで,どんな人間であっても決して侮ったりはしない.興味さえ持てば,立場や状況なんて関係なしに付き合う.相手の肩書とか社内的な評価なんてまったく気にしない.

  • 気楽に生きろ
  • 自分を好きになれ
  • 後ろめたさだけは持つな

最後までこの3つだけ忘れなければいい.