大阪都構想

出張移動中に読んだ.

体制維新――大阪都 (文春新書)

体制維新――大阪都 (文春新書)

明治政府はまず,公務員制度の改革をやりました.それが版籍奉還です.それから廃藩置県をやり,さらに軍制の改革,通貨の改革まで進めました.こうした一連の改革は体制の変更,つまり一連の制度改革であり,システムの改革だったのです.
民間企業でも,事業がうまくいかなくなると,まず人事を変えますね.最初は「売れなかったのは,何とか部長が病気したからだ」とか「どこやらの支店長が不適切だったからだ」といって,人を入れ替えるわけです.つまり人事の交代,国でいえば政権タライ回しです.
それでもうまくいかないと,やり方を変えなくてはいけないと言い出す.商品の作り方や契約の方法,販売形態を変えようとする.つまり政策の変更ですね.それでもダメだとわかると,ようやく会社の仕組みを変えなきゃいかん,ということに気がつくんです.

トップに必要なのは組織マネジメント.組織が機能するように仕事の割り振り,役割分担を決めることです.東日本震災では,原発事故対応や放射能除染,被害者賠償スキームの構築など国が担当する課題があまりにも大きすぎる.そうなると地方自治体にいかに仕事を振れるか,いかに国の仕事に集中する環境を作れるかというところが,マネジメントの肝になる.ところが,首相や国はすべて自分たちで抱え込むことにしてしまったため,パンク寸前です.

仕事は全部任せる,では結局,各担当者が組織全体の進むべき方向性を意識せず,自らが担当する狭い領域内で判断することになります.今や機動的に右や左に舵を切る時代.組織の方針を,全メンバーが意識することは必要不可欠です.組織の一定の方針の下で,各現場に自律的に動いてもらう.その結果の責任をトップが取るのは当然です.

意思決定において一定のルールのようなものが出来上がりました.

  1. 原則は行政的な論理に勝っている方を選択する
  2. 論理的に五分五分ということになれば,僕が政治的に選択する.これは感覚ですね
  3. 行政的論理に負けていても,これはというものは,政治決定で選択するこおときは行政マンのプライドを尊重するためにも,論理としては行政の言い分が勝っていること,僕の論理が負けていることをしっかりと認めます.しかし,自分の政治的な思い,あるべき論から,敢えてそれを選択したということをしっかりと説く.

そしてことが起きても誰も責任を取らない.重い責任を負った決定でないからいい加減な軽い決定になる.決定権者に重い責任を負わせなければならない.重い責任を負えば負うほど決定権者は熟考し,思い悩み,死ぬほどの苦しみを味わいながら決定する.そしてそのような状況で頼った最後の勘が抜群に冴えるのです.日本の政治家の決断が吹けば飛ぶような軽いものであり,勘もまるっきり冴えないのは,それだけの重い責任を背負った決断ではないからでしょう.

ビジネスシーンでも当てはまりそうですね!!