決断する力

決断する力 (PHPビジネス新書)

決断する力 (PHPビジネス新書)

その瞬間に,何が一番大事なのか.既存のルールに縛られず,目の前の現実をしっかり見据えて,やるべきことをやる.危機管理の要諦である.

努力しない人ほど不平不満不安を言い,仕事ができる人は打開するために提案をする.不平不満不安を言う代わりにサッサッと仕事に取り掛かるからスピード感がある.解決が遅れると困る人が増える,という責任感が集中力を育む.不平のサイクルと解決のサイクル,二つしかない.

仕事ができる,とは,仕事が速い,という意味.決断はスピード,実行もスピード.それが人の信用基準.わかる人にはわかる合言葉.いつも心がけている.

周囲の反対を押し切ってでもやらなければならないことがある.震災は困難であり,国民としてどう課題を共有して乗り切るか,リーダーが決断しなければならない.こういうときは「変人」じゃないと乗り切れない.あれもこれもと意見を聞いてやっていたら,被災地の町からはいつまでも瓦礫の山はなくならない.
一方,秀才というのは,隣を見て判断しようとする.他人の物まねは得意で,短期間にそれなりの成果は出すけれど,自分独自の価値基準を持っていない.だから,他人の評価に弱いし,日和見主義になりがちだ.有事には,秀才は機能しない.危機管理という意味では,ぶれない「変人」の方が緊急時のリーダーに向いている.要するに,組織の中にどれくらい「変人」がいるか.「変人」の混ざり具合が重要だ.

週末は体力をつくる.これ,当たり前の備え.もう一つの週末しかできなこと,本や資料を読み込む集中力.

働くことは,地域社会に貢献するための義務ではなく,対価を得るための手段となった.お金をくれる会社には忠誠を誓っても,地域社会に対する責任もなければ,国民としての義務もない.そういう社会ができあがった.
明治維新による日本の近代化,富国強兵や殖産興業というのは,国民国家としての強制力を伴う政策によって実現した事実がある.徴兵制も,国が国民に求める義務である.ところが,徴兵制では,国家に対する忠誠と親に対する孝行が対立してしまうジレンマに陥る.お国のために戦争に行く.しかし,そこで果てれば親不孝だ.ところが,戦後はそのジレンマから開放されて,忠も孝もなくなってしまった.忠は徹底的に否定され,孝もいつしか消えてなくなった.
しかし,震災後社会になって,もう一度「忠」の出番がやってきた.盲目的な国への忠誠ではなく,国民としての義務を果たすこと.自分たちでできることを持ち寄って「共助」の体制をつくりあげること.われわれ日本人の覚悟が求められている.