2016 BEST5

2016年に読ませていただいた本を振り返ってみた.
順位をつけるのは難しかったので,
とりあえず5点をピックアップ.

熱血漢タイプの人は,「俺に任せてください」と自信たっぷりに言ったりしていかにも頼りになりそうに見えるが,最後まで信用できるということが私の経験から言ってほとんどないのである.熱血漢の情熱は長続きしないのだ.だから熱血漢が意気こんでいる姿なんかを見ると危なっかしくて仕方がない.むしろ熱血漢とは正反対のタイプ,たとえば一見,おとなしくて淡々とした人なんかのほうが,一つのことを粘り強くやる遂げたりするものだ.
麻雀だって「頑張った」という思いはまったくない.「努力」して上手くなったという感覚がまったくないのだ.こういうふうにすれば面白いなとか,こんなふうにやれば上手くいくんだなとか,ただ,そんな感覚で麻雀の牌をいつもいじっていた.むしろ自分がどこまで可能性を持っているか試してやろうと,挑むような気持で向かっていった.そうしているうちに,それは遊びのような感覚になっていくのである.そこにあったのはいつも「努力」ではなく,「工夫」だったと思う.「工夫」があれば何事も楽しくできるのだ.「努力」しようとすればかならず余計な力が入る.練習して上達を続けるには力が入っていてはだめだ.
(努力しない生き方 桜井章一

FUKUSHIMAの惨劇は,事前の想定を超える事態のゆえに起きたのではない.想定を超える事態に向き合おうとしなかった果てに起きたのである.「想像すらできない事態を想定して危機に備えておけ」.核の時代を生きた語り部アルバート・ウォルステッター博士の言葉だ.
(宰相のインテリジェンス: 9・11から3・11へ 手嶋龍一)

僕は何か新しいことをやろうと決めたとき,3つのことを考えます.ひとつは,「それは誰かがやっていないか.すでにもうほかの人が同じ事をやっているのではないか」ということ.二つ目が,「それは誰かを幸せにするか」.3つ目は,「それが自分にとって面白いか」.
(考えないヒント―アイデアはこうして生まれる 小山薫堂

他者の運命に深く心を掛ける,ということの美を日本の教育は教えなくなった.自分の権利を要求し行使することは教えたが,共に運命をいたみ,時には自分が損をしてでも相手を救うことが,むしろ最低の人間の条件だ,などとは全く教えなかった.
(酔狂に生きる 曾野綾子

指示の目的とは何か.それは選手の責任を軽くするためにするものだ.具体的な指示によって,選手に「失敗したらコーチの責任なんだから,思い切っていこう」と型の荷を下ろしてやる.あるいは荷物を半分持ってやる.勝つための視点と,選手の負担を軽くしてやる指示は表裏一体である.
コーチたちは「選手任せ」になってはいけないし,必要以上に「選手の理解者」になってもいけない.私はいつも「選手の顔色を見て指導するな,私の方を向いて仕事をしろ.最終的に責任を取るのは,必ず監督なのだから,監督のほうだけを見て仕事をしてほしい.ダメだった場合には,私一人が責任を取ればいいだけのことだ」とコーチたちに訴えた.
阪神タイガース暗黒時代再び 野村克也