人生をシンプルにする禅の言葉

人生をシンプルにする 禅の言葉 (だいわ文庫)

人生をシンプルにする 禅の言葉 (だいわ文庫)

心外無別法
不幸にならないためにすることは,一つ.それは不幸と感じないことです.小さなことにも幸せを感じる心.そして少々悪いことが起こっても,鈍感になれる心.この二つの心をもつことです.

柳緑花紅
自然の中に身を置くことの幸福感.ありのままの自然の中にいれば,ありのままの自分の姿が見えてきます.そこには,妄想も邪念もありません.他人と比較することもありません.まさに,自らの肌で幸せを感じているのです.

萬法一如
働くことの意味というのは,お金を稼ぐためだけではありません.目的の一つにすぎない.もっと大切なことは,自分がもっている特技や技術などを生かして,他人や社会のためになることをする.それこそが人間が働く意味なのです.あなたかしたことで,まわりの人が笑顔になる.「ありがとう.助かった」と感謝してくれる.この喜びこそが,生きている実感だと思います.仕事=他人の喜びととらえてみてはいかがでしょう.

水到渠成
現代の日本は,あまりにも成果だけが重要視されるように思います.これはやはり,アメリカ型社会の影響だと私は思います.アメリカは多民族国家です.つまり,仕事の進め方のプロセスが人によってそれぞれ違います.仕事に対する考え方も,取り組み方もそれぞれです.そういう社会では,どうしても成果だけが評価の基準になってしまいます.言い換えれば,どんなやりかたをしても,結果さえよければいい.日本では,こうした考え方はなじまないような気がしています.
日本人というのは,結果を出すまでのプロセスを評価する民族です.生きていくうえで,これは素晴らしい考え方だと思います.なぜなら,人生とは成果が出ないことのほうが圧倒的に多いからです.

動中静
「評価」とは何か.それはまわりが作り上げるもので,自分があれこれとアピールするものではないのです.私はこれができる.私はこれほどまでに優秀だ.いくらそう叫んだところで,相手が認めてくれなければ評価にはつながらない.叫んでも評価されなければ,それが大きなストレスになるでしょう.そんなことは気にせず,目の前のことに一生懸命に取り組むことです.その結果として評価されればそれでよし.されなくてもまたそれでよし.一生懸命にやったという充実感があれば,評価なんてたいして重要でない.いっそ,そう考えてみてはいかがでしょう.

日々是好日
生きがいとは,世の中に認められて誰かの役に立つこと.これに尽きるのではないかと思います.認められるというのは,何も会社で評価されたり給料が増えたりというだけではありません.それは単なる結果にすぎません.生きがいとは人と人との関係からしか生まれてはきません.自分がつくったものを喜んで使ってくれる人がいるからこそ,それが生きがいとなる.「誰かのため」という気持ちがあってこそ,私たちはそこに生きがいを見いだせるのです.

アメリカという国は他民族社会です.いろんな民族の人が共存しているから,考え方や習慣は違って当たり前.仕事に対する取り組み方や他人との付き合い方もバラバラです.そういう中で評価しようとすれば,結果だけを見るしか方法はありません.つまりプロセスはどうでもよくて,結果さえよければそれでいい.結果を出すためには手段を選ばない.他人を蹴落として結果を出すことは,悪いことでも何でもない.そんな価値観が根付いているわけです.
ですからアメリカ人を見ていると,彼らは負けることに強いと感じます.個々人が勝負をして,勝ったり負けたりする.当然勝つときもあれば負けるときもある.常にそういう環境にいるために,負けたとしても「今度勝てばいい」と思うことができる.
仲間意識をしっかりともち,互いの欠点を補い合う.一人が失敗しても,周りの皆がそれをカバーしていく.そういうつながりの中で生きてきたのです.評価も然りです.グループで成果を上げれば,そのグループの皆が評価される.たいして貢献をしていない人間も,同じグループの仲間として評価してもらえる.日本人というのは,昔からそういう関係の中で生きてきたのです.

原発によって避難させられている福島の人たち.どんなに時間がかかっても自分の土地に戻りたいといいます.日本人は農耕民族です.自分の土地に根付き,その場所で働き生きてきた.先祖代々にわたって,一生懸命に土を耕してきたわけです.「あなたの土地を買いますから,別の土地に移り住んでください」.もしも政治家や行政がそんなことをいったとしたら,この国の精神は崩壊してしまいます.日本人の心が失われてしまいます.