小林カツ代と栗原はるみ

小林カツ代と栗原はるみ 料理研究家とその時代 (新潮新書)

小林カツ代と栗原はるみ 料理研究家とその時代 (新潮新書)

自分としてはまったく興味は無い.
が,世の中の女性には絶大なる人気.
興味半分で読んでみた.

働く女性の時代に支持を集めたのは,それまでの料理の常識をくつがえすような時短料理を考え出した小林カツ代である.外食が日常化し,家庭料理にも変化を求める人がふえた平成の時代になると,数千レシピを提供する栗原はるみがカリスマ的な支持を集める.小林や栗原の人気の背景には,女性の生き方や価値観の大きな変化がある.
理研究科が教えるのは,家庭料理である.彼女・彼たちが必要とされるのは,私たちの暮らしや食べたいものがどんどん変わり続けているからだ.人気となる料理研究家にはその時代に登場する必然がある.

本書のエッセンスは上の一節.
これまでの人気となった料理研究家をリストアップし,
なぜその時代に人気となったのか...
当時の主婦たちが求めた料理への要求から見直したもの.

ふだんから時短料理を提案している小林だからこそ,火の回りをよくする調理方法を選び,短時間に煮物を完成できた.ちなみに番組では浅鍋よりさらに火の回りが速い鉄のフライパンを使っている.
料理がしやすく手入れが簡単,と周りからすすめられて,樹脂加工のフライパンを使っていた事があるが,炒め物では野菜から水分がベチョベチョ出てくる.
樹脂加工のフライパンは初心者にとって敷居が低いかもしれないが,料理の上達はあまり期待できない道具だ.少々焦げ付いたところで,鉄のフライパンを使ったほうが野菜の水分は出にくくなるし,肉もうま味が増す.木の落し蓋は具材に味を染みこませ,火の通りを早くする.使った後に垂れる汁も,紙製より少なくて済む.いちいちふたを自作しなくていいし,何十年も仕えるので経済的だ.

若い世代があこがれるのは,栗原はるみが,主婦になりうると自らを想定する女性層のヒエラルキーのトップに立ち,すべてを手にしているからである.高い社会的地位と高収入を約束してくれる仕事を持ち,幸せな家庭を維持し,育て上げた子ども達もいる,という意味である.

男性の料理と女性のそれとでは決定的な違いがあります.義務として毎日のおかずをつくるのが女性なら,あくまで優雅な趣味としてつくるのが男の料理です.