海賊とよばれた男

「製油所建設は,国岡商店の試金石であると思ったのだ.もし店員たちが初心を忘れずに頑張る気持ちを持っているなら,必ずや10ヶ月で完成する.しかし,もし自分たちは大会社の社員であるというおごった気持ちを持っているなら,2年いや3年経っても完成はしないだろう,と」

「ぼくは,今度の石油危機は,日本国民にとっては天の下された試練と言えるのではないかと思っている.国民は享楽に慣れきって,節約を忘れてしまった.そこで天がモノを大切にせよと反省の機会を与えたのではないか」
「しかし,さすがは日本人だ.すでに国民は緊張し,電力の節約などで積極的に政府の方針に協力している.戦後,国民が自分を捨て一致団結して,国や社会のために尽くすということが,こんなにはっきりした形であらわれたことはない.この姿を取り戻せたなら,石油危機も意味があったと思う」

自分は39年も仕えてきたにもかかわらず,一度も言われたことがない言葉がある.それは「儲けよ」という言葉だった.