動乱のインテリジェンス

動乱のインテリジェンス(新潮新書)

動乱のインテリジェンス(新潮新書)

こうした情勢のもとでは,日本側の同義的な優位性こそが,国際社会に日本の主張の正しさを訴える決め手になるんです.だからこそ,日本国内にある中華学校や中国系企業にいかなる場合も手を挙げてはなりません.

どうして「尖閣諸島をめぐる領土問題は存在しないので,中国と交渉しない」という言い方をやめて,歴史的・国際法的に日本固有の領土であると中国と交渉してその事実を国際社会にアピールしないのか.その答えはじつに簡単明瞭なんです.外務官僚が中国政府と難しい交渉をやらなきゃならない.外務官僚はそれが面倒なためにサボっていたんですよ.

沖縄の予算は一括して計上し,沖縄県に全部渡して,あなたたちで使いたいようにやれと.あとは,中国に関する正確な情報を沖縄に提供することです.そうしてあとは沖縄の人々に考えてもらう.そういう正確な情報さえあれば,沖縄の政治エリートたちが日米同盟の堅持で動くのは自明の事だと思います.

そんな状況でアメリカに勝てると本気で思っていた日本人は誰もいない.しかし,いますぐ手を上げて降伏しようと思っていた人間もいない.そこで出てきたぎりぎりのせめぎあいというのは「国体がどうなるか」という話だった.国体護持です.そこさえ冒さなければ,苦渋の選択つまり降伏もやむなしと.まさに金王朝保全することが北朝鮮にとっての「国体護持」なのです.

アメリカは「日本なきTPP」などありえないと考えています.ですから「日米豪」枢軸の安全保障・経済同盟に育てようと構想していると言っていいでしょう.これは決して単なる経済協定なんかじゃない.むしろ安全保障の観点から考えるべきです.

中国は「ASEANプラス6」やその先行形態としての「日中韓FTA自由貿易協定」などを志向しています.ただ危険なのは,万が一日本が中国の思惑にのってあいまえば,1921年のワシントン軍縮会議の二の舞になってしまいます.「ワシントン軍縮会議」と引き換えに,「日英同盟」が破棄されました.そして日本は英米との対決への道を踏み出していきます.多国間の条約体制では二国間の安全保障同盟を到底補えない.これが歴史の教訓です.