経済のしくみ100話

新版 経済のしくみ100話 (岩波ジュニア新書)

新版 経済のしくみ100話 (岩波ジュニア新書)

日米経済摩擦
アメリカの苦境は日本のせいだけではありません.むりやりドル高を続けたこと,アメリカ企業の多国籍化を進めたことも原因です.摩擦緩和のためには,日本は,理不尽な外圧には屈せず,日本の行動の正すべきところは正すという道を進むべきです.

ウルグアイ・ラウンドとWTO
日本は,コメの輸入についてどう決断するかが課題でした.結局,12月15日,今後所要量の4%からスタートして4年間で8%まで輸入すると約束.これは「部分的輸入自由化」と呼ばれています.でも,輸入自由化どころか,輸入義務化ではないですか.

おカネ(貨幣)
いまは,交換のためにはおカネを払うことが条件ですね.そこだけ見れば物とおカネとの交換です.しかしその内容は,物と物との交換なのです.なぜなら,おカネを受け取った側は,そのおカネで物を買うのだからです.おカネは物と物との交換を媒介,仲介しています.おカネはどんなものとでも交換できるという性質,あるいは力を持っているからです.
どんな特性をもつ商品が選ばれて貨幣の地位につくか.二つあるのですが,面白いことにそれが正反対のものです.必需性と奢侈性です.誰もが必要としているものは,どんな品物とでもひきかえに手に入れておきたい.だからおカネの役をする.古い時代,牧畜社会で羊や牛が貨幣だったのはその一例.奢侈品は,なくてすむ.必需品ではないからこそ,それを持つことが富や権力のシンボルになる.だからこそ人々はそれを欲しがる.金貨・銀貨が貨幣になるゆえんです.

紙幣
おカネも歴史の中で変化します.貴金属貨幣にかわって日常的には紙幣が使われるようになりました.そのほうが持ち運びに便利だからです.
日銀券のような中央銀行券が,紙切れでしかないのに信用されておカネとして流通するのはなぜか.それは,はじめそれが兌換券だったからです.それを銀行に持っていけば,金貨に換えてもらえたのです.「この紙片一枚と引き換えに金何グラムをお渡しします」という趣旨が紙幣には印刷されていました.
しかし現在の紙幣は兌換性をもっていません.不換券です.1930年代に金本位制が崩壊して以来,そうなっています.新たな信用の根拠を見つけているからです.ほんとうは,無理にでもその根拠なるものを信用しあっているというべきでしょう.一つは中央銀行券は中央銀行の資産を裏打ちにして発行されている.二つは,政府との間でおカネのやり取りに使えるということ.

日銀券発行のしくみ
日銀券の発行にはルール,しくみがある.日銀券の発行高は,資産の増減によって枠付けられます.日銀の資産の枠内で日銀券が出て行くのです.そして,資産の量や構成の変動に,経済の資金需要の強弱や,どこから資金需要がくるかという性質が映し出されます.それに対応しながら,日銀券の発行量がコントロールされるわけです.

社会福祉
こういうやり方は社会福祉ではありません.第一に援助はお上のお恵みと考えるのが間違い.第二に,根底にある人間観が間違い.困窮の責任はその人の不始末・落ち度,あるいは因縁による不運,よってその責任は当人と家族らが負うべしという人間観です.
社会福祉は恩恵ではありません.福祉の原理は「連帯による自助」です.人々が税金や社会保険料として負担し拠出しあうお金は,連帯に役立つからこそ自助のためにも役立つのです.