外交交渉と少子化問題

国家の命運 (新潮新書)

国家の命運 (新潮新書)

俎上にあがった問題に対する言い訳と,具体性のない対応策では,相手に売れない.「問題を認め,その上で,対策は大胆に,かつ目標は明確に」がポイントなのだ.

「中国は反応しないからやりにくい,それに比べて日本は敏感に反応した」という指摘には苦笑せずにはいられなかった.日本は敏感に反応しすぎる,というのは確かに当たっていたからだ.

「動じない」「言い訳しない」「相手を攻撃する」というパターンであり,日本の反応とは正反対である.この中国の対応は注目に値する

多くの外国人識者が「なぜ日本ではデモグラフィー(高齢者が増え,それを支える現役世代が減ってゆく,人口動態の変化)が差し迫った危機として受け止められないか,まったく不思議だ」という.

交渉の場に臨む前に,まずは相手方をよく研究しておくことである.

  1. 相手の国が何を狙っているか
  2. 交渉と結論を急いでいるか
  3. 相手国の力はどのくらいか
  4. 交渉担当者の人となり,国内における力量はどうか

もっとも大事なことは,交渉相手との間で信頼関係が築けるか,だ.

  1. ウソをつかず,欺かない
  2. 絶対に必要なことと,融通の効くことを分け,優先順位を相手に分かるように伝える
  3. ダメなこと,デリバーできないことは,はっきりと言う

攻撃こそ最大の防御−外交交渉だけではなく,およそ交渉というのは守勢だけではダメ,攻めが必要ということだ.そして攻めの姿勢とともに,国際社会ではロジックが大切である.これまた外交にかぎらずグローバルなビジネスの場,外国企業を相手にしても同じことであろう.

日本は少子高齢化,巨額の財政赤字など,世界的にみてまったく絶望的な課題を抱えている.なんとか状況を打開するために,大胆な行動を起こす必要がある.たとえば,百万人単位で外国人労働者を入れるとか,なりふりかまわず思い切った対策をとらなければならないのでは

著者専門の外交交渉だけでなく,少子化問題高齢化社会問題が日本の活力を失いつつあることを非常に憂いている.