- 作者: 茂木健一郎
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2007/12/04
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 14人 クリック: 255回
- この商品を含むブログ (281件) を見る
それでは,どのように勉強すれば,脳を喜ばせることができるのでしょうか?
もともと人間のモチベーションというのは,その人の好きなことや,人からほめられた経験,人から認められるといったポジティブなものからしか絶対に生まれません.いわゆる「ほめて伸ばす」という教育法は,強化学習の観点から見れば正しいやり方といえるでしょう.もし,叱るなら,そのやる気を軌道修正するときだけにしてください.
脳が喜びを感じるためには「強制されたものではない」ことが大事だからです.何をするにしても「自分が選んでいる」という感覚こそが,強化学習に欠かせません.部下や子供の主体性を引き出すためには,どんなちいさなことでもいいから自発的にやったことで「成功体験」を持たせることが大切.
勉強に限らず,仕事を覚えたり,創造性を発揮すること,さらにはアスリートがトレーニングによって上達していくのも,すべて強化学習によるものです.端的にいえば,脳は,負荷をかけて苦しみを与えたあと,それが成功したときに一番喜びを感じるというメカニズムを持っています.そして,その快楽のもととなった行動を再現しようとするのです.
プレッシャーに弱いのはなぜか? それは「精神的な強度」が身についていないからです.「精神的な強度」とはスポーツの世界でいわれる「根性」とほぼ同義といっていいでしょう.プレッシャーを乗り越えようとするとき「なにくそ」と,力を振り絞って自分を奮い立たせることができる.これが「精神的な強度」です.脳に自分のキャパシティ以上の負荷をかけるという勉強法は,考えてみるとアスリートの強化方法にとても近いのです.常に「タイムプレッシャー」を意識して勉強を続けてました.
記憶回路を使って記憶するとはどういうことか.英文を覚える時を例にとりましょう.まず英文を見ます.次に,それを書き写すわけですが,英文を見ながら写しては意味がありません.一度英文を見たら,そこから目を離して,写すのです.これを何度も何度も繰り返します.
安全基地の役割とは,子供があくまで自主的に挑戦しようとすることを,後ろからそっと支えてあげることです.一番大事なのは,そっと見守ってあげること,見てあげること.見てあげることこそが,安全基地のもっとも大切な要素なのです.
もし部下にチャレンジングな仕事をしてもらいたいと思ったら,部下にセキュアベースを与えてあげることが大切です.「心に掛けていますよ.君がどうやって仕事をしているか,いつも僕の心の片隅にありますよ」というメッセージを送り続けることが,その部下にとっての安全基地になるのです.