いい仕事の仕方

いい仕事の仕方 (PHP新書)

いい仕事の仕方 (PHP新書)

正しさとは何か.やってはいけないことは何か.それを常に意識していれば,人間の美しさ,品格が出てくる.
最近の風潮として,物事を”好き・嫌い”で判断する傾向が強い.人間の本能である.動物的な本能である.そうした座標軸によっていては,決して成長しないし,いい仕事もできない.正邪善悪,”正しい・正しくない””いい・わるい”という座標軸をもってはじめて,仕事への情熱が生まれる.

不満をマイナスに考えてはいけない.不満をプラスに持っていける人こそ,人間的に成長し,人生を上に登っていけるビジネスパーソンだ.
まったく不満のない状況などあるはずがない.不満があるから,何とかそれを良い方向に向けようと努力するのだ.そのための知恵や工夫も湧いてくる.だから仕事への不満を,マイナスに考える必要はない.むしろ,自己向上,成長のきっかけができたと捉えることだ.

成果だけでは正しい評価は難しい.そのプロセスにどれほどの熱意があるかを見抜かねばならない.
同じ仕事をしているのに実績に差が出てくることは,よくあることだ.しかしそれもその仕事の中身をきちんと見て入れば,要領がよくて数字は上がっているが,顧客の信頼は必ずしも得ていない,少々動きは遅いがその誠実さが確実に顧客を増やしている,といったように,一時の数字では判断できない部分がある.
評価する場合,成果だけを見てはいけない.そのプロセスのなかに,どれだけの熱意があつのかを見抜かなくてはいけない.ときには熱意がなくても,ある程度の成果を挙げる人もいる.また,5回に1回ぐらいはポンと成果を出す人もいる.しかし,その成果はあくまで偶然のものである.そのことを区別して評価しなければならない.要は,成果を評価しつつ,その部下の成果を挙げるまでの熱意・努力・誠意もあわせ評価しなければならないということである.

能力を評価する場合,忘れてならないのは,人間そのものの評価に結びつけないことだ.
能力を見る場合,レッテルを貼らずに見ることだ.好き嫌いでその人の能力を評価してはいけない.能力は能力として冷静に客観的に判断していかなければならない.

ビジネスリーダーには2つの型がある.狩猟隊長型と羊飼い型である.これからのビジネスリーダーは羊飼い型を目指さねばならない.
狩猟隊長型リーダーの行動パターンは,「命令」「支配」「管理」であり,部下は「服従」「従属」「甘え」「画一」「無個性」がキーワードになる.一方,羊飼い型のリーダーは,「協力」「協調」「相談」が行動パターンとなる.そして部下には「責任」「自主」「自立」「個性」が求められる.
羊飼い型リーダーは,まず方針を出して,その方針に沿って部下を先に歩かせる.方針の範囲内で,緩やかに部下たちを動かしていく.方針から大きくはずれない限りにおいては,社員の自主性と個性を許容し,最大限に発揮させることだ.そして成果を挙げさせるのだ.

ビジネスリーダーは,部下を正しく導き,成果を挙げなければならない.
部下がいきいきと働き,成果を挙げるためには,ビジネスリーダーは任せた仕事のフォローを怠ってはいけない.真剣なフォローによって,部下は緊張感を持ち,目標に向かって邁進する.しかし,フォローは一面わずらわしいことだともいえる.だからといって,決して妥協してはならない.
部下がビジネスリーダーの方針に沿ったうえで成功したならば,心を込めて褒めてやる.失敗に終わったならば,慰めてやる.もしリーダーの方針に沿わずに成功したならば,無視をすればいい.ここで褒めれば,部下はリーダーの方針に従わなくなる.方針に沿わずに失敗したなら,激怒して叱責すべきだ.この態度を,ビジネスリーダーは一貫して通すことである.そうすれば,部下は必ずリーダーの方針に沿って仕事をするようになる.
ビジネスリーダーは目標を与え,手本を示し,部下の先頭に立って走る.そして部下が方向を誤らずに走っているかどうかを見守る.もし,あらぬ方向に向かっていれば正してやる.この一連のサイクルによって,仕事は正しい方向でスムーズに流れ,成果が挙がるのだ.

最後の一説は肝に銘じておく.
どうしようもない部下に対する姿勢の指針だ.